ピッコリーナが遊びに来た

 

ピッコリーナが遊びに来た

昨日の夕方、ピッコリーナが遊びに来た

「○○ちゃんは居ますか?」との問いかけに私は

「今は妻と買い物に出かけて居ないよ」と答えると残念そうに帰っていった


ピッコリーナとは近所に住む娘の同級生なのだが、愛嬌はあるがヤンチャな性格のため

周囲の大人からは煙たがれていた

同級生の家で飼っている犬を勝手に散歩させてみたり、

遊びに行った同級生の家の玄関が空いていると

勝手に家宅侵入をしてみたり、その度に親は学校に呼び出されて注意と指導を受けている

当の本人はその時でさえも、さして悪びれる様子もなく屈託のない笑顔を浮かべている

先日も娘の縄跳びを勝手に持ち出し自分の物のように使いこんでいた

それを見た娘が「あいつ借りパクしようとしている」明日、文句言ってやる

これからはあいつはパクリーノだなとブツブツ独り言を言っていた

ああ、こういう実例が元になってアダ名とか二つ名ができるんだなと妙に納得した

そんなヤンチャな彼女だが私は嫌いではない、むしろ好感に近い感情を持っている

誰に対しても物怖じしない愛嬌と行動力によって凹む時はあるのか?

と思わせるほど積極的であるからだ

去年の運動会でピッコリーナは足が遅い癖にリレーの選手に成りたく立候補したらしい

もちろん担任の先生に却下され悔し涙を流したそうな

その運動会でのこと、徒競走の順番を待つピッコリーナの姿が見えた

自分の娘が出場する順番以外だったので旧知の間柄のピッコリーナを応援することにした

「頑張れーピッコリーナ!!」ややオーバーアクション気味に手を振り声援を送る

ヲタ芸並の手のフリにピッコリーナも気づいたのか満面の笑みを返して返答してくれた

「パン!」と電子銃の乾いたスタート音が鳴り響き生徒は一斉に走り出す

短距離走ほど才能をいう競技はない

足の運び方、手の振りなど反射神経にも似た身体の使い方によって走るスピードは違ってくる

残念ながらピッコリーナはそういう類の才能に恵まれなかったのか

気持ちだけが高回転を続けるAE86のように必死の形相の割に身体が前に進まない

ピッコリーナは外枠での発進のため少しのアドバンテージがあったのだが

第一コーナーに侵入するときには虎の子の貯金も使い切ってしまった

カーブで外側に膨らむのを必死に堪えるピッコリーナに隣のインコースから

ジリジリと追い上げる走者が迫ってきた

アウトコースを走るピッコリーナがカーブを曲がった時に

内側から抜かそうとする走者に競輪選手ばりに頭からタックルをして抜かされないようにブロックをして牽制していた

F1車が後方から抜かされないように蛇行を重ねるような感じさえする

しかし彼女の鈍足では高性能車の差しに耐えられないのか一瞬でぶち抜かれていった

結果は6人中5番手の5位だった

周囲の親御さんは彼女のタックルに苦笑したり渋い顔をしていたが

負けると解っている戦いでも力の限り戦いを挑む彼女の姿に敬意に似た感情を抱いた

長い人生において負けると解っていても戦わなくてはならない時もあるだろう

いったいピッコリーナとはどんな意味があるのだろうか?

おそらくイタリア語かフランス語から引用しているのだろう

もしかすると「ピッコリーナ」とはそういうチャレンジスピリッツを表した言葉なのだろうか

私も人生においてピッコリーナのように生きたみたいと切に思う

 

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